うつ病はめずらしい疾患でない事はいうまでもありません。このブログを読んでいる方の中にも、近しい人がうつ病になって加療中という方もおられるでしょう。
よく、そういう方から、「何をしてあげればいいのか」と質問されます。答えは「何もしない事」です。
そういうと、「じゃあ何があっても知らんぷりしたらいいんですね」と言われますが、そういうことではありません。心配しつつも、やや距離をおいて見守るという意味です。それを説明しても誤解を招くので、してはいけないことを論じたいと思います。
①お節介型
心配している度がすぎてしまい、毎日何度も「調子はどうか」「少しは元気が出たか」「いつ頃治りそうか」と度々声をかけすぎる人。うつの方は、自分を責められている、自分のせいで迷惑をかけている。そういう気持ちになり、治療を焦り急ぎしんどくなってしまいます。
②自分の価値観押し付け型
うつで家で安静にしている時に「外に出たほうがいい」「運動しないと体がなまる」「ストレス発散に何かしよう」と、自分がして楽しいことを、うつの人に押し付ける場合です。それをして楽しいと感じれたらうつ病ではありません。うつだから楽しめなくてしんどいのです。
③体育会系型
うつになる人は心が弱い、普段から甘えている、といった持論を持ち出し、うつ病といった疾患を医学的なものではなく、気持ちの持ちようであるといった説教をする人がいます。風邪は気合で治すような根性論ではなく、正しい医療で解決しましょう。
④内服否定型
うつ病なのは認め、治療にも協力したいが、内服に関しては「そんなのを飲んだら頭がおかしくなる」「一生薬漬けにされる」と極端に否定する人もいます。確かに、投薬のみ、しかも多剤併用、多量投与は好ましくありません。ただ、急性期にはどうしても必要な内服もあります。ネットでは抗うつ薬の副作用がたくさん掲載されています。乱用はいけませんが、使用は専門家の指導のもと適切に行うのはどの疾患でもそうなので、一概に否定しすぎるのも良くありません。
⑤サラブレッド信仰型
うつ病は誰がなってもおかしくありません。私も明日なるかもしれません。少ないケースですが、「うちの一族は精神疾患の人は先祖代一人もいない」「だからうちの血筋の人間はうつではない」と疾患の発病を否定される方がいます。うつになられた当人は、一族の迷惑になったと信じ自分を責めます。本人には何の非もないのに。
⑥一喜一憂型
うつ病の方は、ずっとしんどいわけではありません。時々霧が晴れたかのように気持ち良く動ける時があります。その時に「もう治った」「病院に行かなくていい」「薬もやめよう」という方がいます。また逆に、何も原因なく急に増悪することがあります。その時に「あそこの病院はダメだ」「薬が合っていないから変えよう」と、地に足がつかない治療をし、右往左往しているううちに時間だけが無駄に過ぎていくこともあります。一時的な警戒増悪に干渉せずに、ある程度長い目で見てあげましょう。
他にしてほしくない事はたくさんあります。冒頭の、「何もしない」というのはこのように、うつ病を悪化させるような事はしないという意味です。もし、うつ病の方の回復に協力したいと思うのなら、何をすればいいのかを考える前に、何をしてはいけないのかを考えるべきと思います。