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薬物治療とカウンセリング

今回は精神療法という概念を考えてみたいと思います。

精神療法というと堅苦しく思えるでしょうが、一般的にいうカウンセリング。もっとかみ

くだくとお医者さんに話を聞いてもらうという、ごく気さくな行為だと考えてください。

お話を聞くだけでどうなるのかと思う方もおられるでしょう。こころに悩みや不安を持っ

ているひとはまずそのことを話すだけで気持ちが楽になります。ここで大事なことは2

つ、①話す相手は誰でもいいのか②話した結果相手がどういうアクションをおこすかの2

点です。①の話す相手は信頼のおける家族や友人でも構いません。ただ、身近であるがゆ

えに言いにくいこともあるでしょう。秘密のつもりで話したのに第三者に言われてしまう

恐れもあります。

②の相手のアクションですが、自分にとって都合のよい受容的なアクションが好ましい場

合もあれば逆もあります。本当に悩んでいるのに、そんなの甘えているだけだと否定され

ても困ります。我々心療内科医は疾患であるかどうかを慎重に判断しながら、時に指示的

に、時に受容的に、また医療では解決できないことはただ傾聴するだけのこともありま

す。そのようなやり取りを何度か繰り返していくうちに、患者さんが自ら道を選び自ら納

得のいく解決をみつけてくれることも多々あります。そう考えたら心療内科医は、長いマ

ラソンを走っている走者の横でじっと見ているだけの伴走者のようかもしれませんね。

話は変わりますが精神科の世界で薬のことをドイツ語でMITTELと書きます。英語でいう

とMIDLLE(間)です。なぜMEDICINE(薬)と表記しないのか。それは薬とはそれその

ものが患者さんを治癒させるものでなく医師と患者さんの間を繋げてくれる存在と位置づ

けているからです。精神科の世界では薬は出しさえすればいいものでもなく(前回述べた

ように医師免許さえあれば誰でも薬は出せます)、患者さんにとっては薬とは飲みさえす

ればよいものではありません。医師と患者さんが二人三脚で治癒にむけて進むための物。

MITTELでいいのだという私の私見でした。

 

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