今回はちょっと現在のうつ病治療への私のボヤキもあります。気に触る方へは先に謝
っておきます。
そもそも薬を使わずにうつ病を治したと鼻高々におっしゃる方がいますが、本当に
診断はうつ病であっていますか?という疑問です。
最近は自分で自分のことを「うつ病だから抗うつ薬を出して欲しい」と自己診断(ネ
ットで自己診断ソフトがあるのでそうされるのでしょうが)されて来院する患者さん
がいます。もちろん診断があっているかたもいますが、適応障害や神経症など前回述
べたように鬱っぽい症状だけどうつ病ではない人もいます。そういう鬱っぽい人に抗
うつ薬を出さずに治療して、薬を使わずにうつ病を治したと言い切っている場合もあ
るのではないでしょうか。
他方、うつ病でない患者さんに抗うつ薬を投与されるケースも多いです。残念ながら
今の日本の制度では医師免許さえあれば心療内科勤務経験のない医師でも抗うつ薬を
処方できます。実際、1998年に173億円だった抗うつ薬の売り上げは2003
年には875億円に膨れ上がっています。一概には言えませんが、なんちゃって精神
科医がうつ病でない人に過剰な投与をしたのがかなり含まれているのです。このよう
な現状から患者さんにとっても、「薬をのんでいるのに良くならない」「飲むとかえ
ってしんどくなる」というあってはならない事態が生じています。結果として本当に
うつ病で抗うつ薬で治療すべき患者さんが抗うつ薬を飲むことに不安を持たざるおえ
ないというあってはいけない事態になっています。精神科学会も専門医でない医師が
多剤の抗うつ薬を出すべきでないとの見解を示していますが患者さんにとっては、そ
の医師が何者かまで熟知しようがないでしょう。われわれ医療者が適切な説明や治療
を行わないと、今後も無駄な投薬が増える一方ではないかという戒めもこめた私見で
した。結局今回は薬物治療の是非にはで言及できませんでしたので次回「薬物治療と
カウンセリング」について語らせていただきたいと思います。
中田こころのクリニック 院長